【国の資料が明かす】9割の経営者が知らない、AI導入で失敗する会社の共通点
2025/08/05

【国の資料が明かす】9割の経営者が知らない、AI導入で失敗する会社の共通点

【国の資料が明かす】9割の経営者が知らない、AI導入で失敗する会社の共通点

「先生、AI、AIって世の中は騒いでいるけれど、結局、うちみたいな中小企業でどう使えるんですか?」

これは、私が講演やコンサルティングの現場で、多くの経営者の皆様から受ける、最もリアルな質問です。日々の資金繰りや人材採用、営業活動に追われる中で、「AIが重要だとは分かっているが、どこから手をつけていいか分からない」「高価なツールを導入して失敗したくない」と感じるのは、至極当然のことでしょう。

もし社長が今、同じような漠然とした不安や焦りを感じているのであれば、今回のコラムはきっとお役に立てるはずです。

世の中の大きな流れ:国も示す「待ったなし」のAI活用

個人の意見として「AIは重要です」と叫ぶのは簡単ですが、それでは説得力に欠けます。そこで、まずは客観的な事実、つまり国が示す大きな流れを見てみましょう。

実は、総務省が毎年公表している「情報通信白書」という、いわば国の公式レポートがあります。この最新版(令和7年版)を読み解くと、世の中のAI活用のリアルな現在地が見えてきます。

白書の調査によると、日本企業の中で生成AIの活用方針を明確に定めている企業の割合は、米国(84.8%)や中国(92.8%)といった先進国に比べて低い水準にあります 1111。特に、中小企業においては、約半数(47.6%)が「方針を明確に定めていない」と回答しており、大企業(25.8%)と比較しても、その遅れは顕著です 2

「まだ周りもやっていないから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、これは非常に危険なサインです。なぜなら、AI市場は今後、爆発的に成長することが予測されており、国内のAIシステム市場だけでも、2024年の約1.3兆円から2029年には約4.2兆円へと、わずか5年で3倍以上に拡大すると見込まれているのです 3

この大きな流れは、もはや「乗り遅れる」というレベルの話ではありません。例えるなら、皆がスマートフォンで顧客と連絡を取り合っている時代に、自社だけが固定電話と手紙で戦おうとしているようなもの。ビジネスの土俵そのものが変わってしまっているのです。

現場のリアルと成功の秘訣:白書のデータだけでは見えない「ギャップ」

ただし、こうした大きな流れと、私たち中小企業の現場には、少し温度差があるのも事実です。私が日々多くの経営者とお話しする中で痛感するのは、「AIへの過度な期待」と「具体的な活用イメージの欠如」という、大きなギャップの存在です。

白書のデータを見ても、日本企業がAI導入に際して懸念していることのトップは「

効果的な活用方法がわからない」(30.1%)となっています 4。まさにこのギャップこそが、AI導入が失敗する最大の原因なのです。

私がこれまで見てきた「失敗する企業」には、いくつかの共通点があります。

  • いきなり高価なAIツールを導入しようとする「ツール導入病」
    「とりあえず話題のAIツールを導入すれば何とかなるだろう」と考えてしまいますが、これは目的と手段の履き違えです。包丁を買っても料理の腕が上がるわけではないのと同じで、まずは「何を作りたいのか(どんな課題を解決したいのか)」がなければ、宝の持ち腐れになります。
  • インターネット上の情報を鵜呑みにする「情報迷子病」
    私が生成AI関連のコンテンツ監修をしていると、多くの企業がインターネット上の誤った情報や、自社に合わない成功事例に振り回され、結果的に遠回りしているケースによく遭遇します。「〇〇するだけで売上10倍!」といった魔法のような情報を追いかけるのではなく、信頼できる情報源を見極めることが重要です。
  • 「AIはIT部門の仕事」と丸投げしてしまう「他人事病」
    AIの導入は、単なるシステム導入ではありません。業務のやり方そのものを変える経営改革です。社長自身が「AIを使って会社をどう変えたいのか」という意思を持たなければ、プロジェクトは決して成功しません。

一方で、「成功する企業」は、驚くほど地道なことから始めています。彼らはいきなり高価なツールを導入しません。まずやることは、既存の業務プロセスの徹底的な見直しです。「そもそも、この報告書は必要なのか?」「この会議の目的は何か?」といった、AI以前の課題を洗い出すことからスタートします。

業務の無駄をなくし、課題を明確にして初めて、「では、この課題を解決するために、AIの力をどう借りられるか?」という具体的な活用イメージが湧いてくるのです。

明日からできること:高価なツールはまだ買うな!

「では、一体何から始めればいいのか?」

その答えは、社長のデスクの上、そして社員との日々の会話の中にあります。

ステップ1:課題の「見える化」

まずは、社内の業務で「時間と手間がかかっていること」を3つ書き出してみてください。例えば、「毎日の問い合わせメールへの返信」「新入社員への業務内容の説明」「毎週の定例会議の議事録作成」など、何でも構いません。

ステップ2:情報の「整理整頓」

次に、それらの業務に必要な情報が、社内のどこに、どのような形式で保管されているかを確認します。ファイルサーバーの中、個人のPCの中、ベテラン社員の頭の中…バラバラになっていませんか?まずは、それらの情報を整理し、一元管理することから始めましょう。

ステップ3:正しい「情報収集」

いきなりAIツールを探すのではなく、まずは信頼できる情報源から「AIで何ができるのか」を学んでください。例えば、今回ご紹介した総務省の「情報通信白書」のような公的な資料は、偏りのない事実を知る上で非常に有効です。

ここまで読んで、「なんだ、そんな地味なことか」と思われたかもしれません。しかし、家を建てる前に土地を整備し、設計図を描くのが当たり前であるように、AI導入もまた、この地道な準備こそが成功の9割を決めると、私は断言します。

挑戦する経営者の皆様へ

AIという言葉に、私たちはつい魔法のような力を期待してしまいます。しかし、AIは魔法の杖ではありません。社長のビジョンを実現し、社員の負担を軽減し、会社の成長を加速させるための、極めて優秀な「道具」であり「パートナー」です。

そして、その道具を使いこなすのに、特別なITの才能は必要ありません。必要なのは、自社の課題と真摯に向き合い、「もっと会社を良くしたい」という経営者としての熱意だけです。

本日お話しした「課題の見える化」という最初の一歩、ぜひ明日から試してみていただけないでしょうか。その小さな一歩が、5年後、10年後の会社の未来を大きく変える分水嶺になるはずです。

 

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