【オトナンサー】に掲載されました。
2018/04/22

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ストリートビューに写った犬の顔に“ぼかし”が…「肖像犬」「笑った」、その理由は?

SNS上などで先日「Googleストリートビュー」に写り込んだ「犬」が話題となりました。実際に確認すると、鹿児島県の海岸付近で放し飼いにされている犬が撮影カーに気づき、車を追いかけている様子が数カット存在。中には、犬の顔にぼかしがかかっているものもありました。ストリートビューでは、写り込んだ人物の顔や車のナンバープレートに、プライバシー保護の目的でぼかし処理が施されますが、犬にも適用されたことについて、SNS上では「犬の顔にもモザイク入るんだ」「まさに肖像犬(権)」「笑った」などさまざまな声が上がっています。
オトナンサー編集部では、犬など動物の肖像権や今回、犬の顔にぼかし処理が行われた背景について、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士と一般社団法人日本情報技術振興協会(JAPRO)認定講師の久原健司さんに聞きました。

肖像権やプライバシー権は「人」のもの
Q.犬をはじめとする動物にも肖像権やプライバシー権はあるのでしょうか。
刈谷さん「肖像権は、法律や判例で明確に定義されているわけではありませんが、一般的には『人の自己の肖像(写真、絵画、彫刻など)をみだりに他人に撮られたり使用されたりしない権利』として用いられることが多いです。一方、プライバシー権は『人の私生活上の事柄をみだりに公開されない権利』です。犬などの動物は法律上、権利義務の客体となることはできないため、肖像権やプライバシー権はないと考えられます」
Q.商業的価値のある「タレント犬」でも法的扱いは変わりませんか。
刈谷さん「タレント犬であっても変わりません。なお、商業的価値を保護するパブリシティー権についても、肖像などが有する顧客吸引力を排他的に利用する『人』の権利であり、同様に認められていません」
Q.飼い主(所有者)の許可なくペットの写真を撮ったり、写真をインターネット上などにアップしたりする行為に法的問題はないのでしょうか。
刈谷さん「単にペット自体の写真を撮るだけ、またネット上に出すだけで法的問題になることはないでしょう。ただし、被写体にペット以外の人の肖像、室内などのプライバシー、芸術品などの著作物が含まれる場合、その権利を侵害したとして、損害賠償請求の対象となる可能性があります。また、撮影場所が公道など公の場所でなく、撮影が禁止されている施設などである場合は、その管理権を侵害したとして、同様に損害賠償請求の対象となる可能性もあります。さらに、写真をネット上などに出す場合も、たとえば飼い主(所有者)を誹謗中傷する情報とともに出すと、飼い主(所有者)の名誉権を侵害したとして損害賠償請求の対象となる可能性があります」
刈谷さん「つまり、動物の写真撮影において、飼い主(所有者)との関係では、飼い主自身の権利を侵害することにならない限り、法的問題に発展することはないと言えますが、飼い主以外の権利を侵害する可能性は十分にあるので注意が必要です。また、法的問題と言えずとも、マナー違反ではあるので、できる限り飼い主の承諾を得るように行動すべきでしょう」

ストビューのぼかし加工の仕組みとは
Q.Googleストリートビューの画像における、ぼかし処理の対象となる基準や方法について教えてください。
久原さん「グーグルが提供するコンテンツには、『ぼかし加工』のポリシーがあります。グーグルでは、人の顔や車のナンバープレートにぼかしを入れる最先端の技術が開発されており、その機能をストリートビューに適用し、ぼかし加工処理が行われています」
Q.今回、犬の顔の一部カットにぼかし加工が入った原因は何だと思われますか。
久原さん「原因は2つ考えられます。一つは、最先端の技術によって自動的に処理されるため、何らかの基準に当てはまった結果、ぼかしが入った可能性です。過去には、銅像や看板の人物画の顔にぼかし加工がされているケースも報告されています。その基準は一般には公開されていないため詳細は不明です。もう一つは『問題の報告』として報告された可能性です。利用者が不快に思う内容に関しては、運営側が真摯に対応することが多く、はっきりと認識できる画像であった場合は、人に限らず動物の場合でもぼかしを入れる場合があります」
Q.今回のケースのようにペットがストリートビューに写り込んだ場合、削除やぼかし加工を求めることは可能でしょうか。
久原さん「グーグルの利用規約、Googleマップ、Google Earthの追加利用規約、『画像の承認とプライバシーに関するポリシー』のいずれかに違反していると思われるコンテンツを見つけた場合、『問題の報告』リンクを使ってグーグルに連絡することでぼかし加工や画像の削除を求めることができます。利用規約は日々変化していますので、今回のケースが該当するか一概には言い切れませんが、利用者が不快に思う内容に関して運営側は真摯に対応しているので、『問題の報告』リンクから問い合わせてみるとよいでしょう」
Q.たとえば「不快」などを理由に、削除やぼかし加工を依頼することもできますか。
久原さん「できます。こうしたサービスの場合、サービスそのものが提供側のルールではなく、利用者側のルールに準ずるところがあるため、一人でも不快に思うユーザーが存在すれば、ポリシーに違反しているかどうかは二の次で積極的に改善する傾向があります。一人で複数申請すると拒否される場合もあるようですが、常識の範囲内で、ほとんどの場合で要求に対応してもらえる認識です」
Q.「問題の報告」の使い方を教えてください。
久原さん「ストリートビューの画面上から『問題の報告』リンクをクリックまたはタップし、必要事項を入力して送信します。この『問題の報告』リンクは、パソコン版ストリートビューの画面上では画像ウィンドウの右下に表示されており、アプリ上では旗のアイコンやメニューボタンから利用できるようになっています」

実際に表札のぼかしを依頼すると…?
 ちなみに、記者が試しにストリートビューで自分の実家を見てみたところ、表札も番地もはっきりと写っていることが判明。「問題の報告」リンクから表札の「ぼかしのリクエスト」を依頼すると、直後にリクエスト受理のメール、5日後には処理完了の連絡メールが届きました。その後、指定した表札にはぼかし加工が施されており、常識的な依頼内容であれば迅速に対応してもらえるようです。

(ライフスタイルチーム)

https://otonanswer.jp/post/13378/

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