【日刊SPA!】に掲載されました。
2019/03/23

【日刊SPA!】に掲載されました。

子どもにスマホを持たせるべきか?「小中学校への持ち込み禁止」見直しから考える

 ITジャーナリストの久原健司です。

 文部科学省は2月19日、小中学校へのスマートフォン持ち込みを原則禁止とした通知を見直す方向で検討を始めることを発表しました。この通知は2009年に都道府県教育委員会に対して出されたものです。

校内のスマホ持ち込み、トラブルは起きない?

 内閣府の「平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、満10歳から17歳までの青少年5,000人のうち、スマートフォンやそれに準ずるもの(子ども向け携帯電話も含む)を所有・利用している割合は72.1%。そのうち、小学生では55.5%、中学生では66.7%となっています。

 このように、いまや半数以上の小中学生がスマホを所有しているため、学校への持ち込みに関して再検討するのは当然でしょう。もし学校内へ持ち込みが可能になった場合、どのようなメリット・デメリットが考えられるでしょうか?

 まずメリットは、連絡手段がある点です。実際に、子どものスマホ使用に関してのメリットで最も多いのが「連絡手段」(43.7%)というデータもある通り、子にスマホを持たせる一番の理由は連絡手段であるからです。(親子のモバイル事情調査 参照)

 しかし同時に、不安に感じる親御さんも多いことでしょう。

 私も小学生の子どもを持つ親として、小中学生のスマホ所有に関しては不安を感じます。持たせなければならない目的がガラケーで事足りると判断すれば、スマホを子どもに与えることはないでしょう。

 不安要素の1つとして、子どもたちがスマホでどのようなコミュニケーションを取っているかわからないということがあると思います。これに関しては、友達同士でどのような会話がされているかを、親が把握していないのと同じです。

 しかしそれ以上に、TwitterやLINEをはじめとするSNSでのコミュニケーションでは、実際に口には出せないような過激な発言に対しても敷居が下がってしまい、ついつい強い言葉を発してしまう人がいて、それがより不安を募らせてしまうのではないでしょうか。

大阪府ではすでに持ち込みを認める

 小学校でのプログラミング教育が2020年度から必修化されることや、すでにタブレット端末活用実践を行う学校など、ITと教育は切っても切れない関係になっています。今回のスマホ持ち込みの件に関しても、1つの側面だけを見て良い悪いを判断することは非常に難しい状況であると考えます。

 ちなみに、大阪府では、今年度から府内の公立小中学校への携帯電話やスマートフォンの持ち込みを認めることにしています。2018年6月に発生した大阪北部地震は登校時間帯に重なり、女子児童が倒れたブロック塀の下敷きになって死亡した事件の際に、児童・生徒がスマホなどを持っていなかったために保護者や学校側と連絡が取れない状況が多数発生しました。

 このことを機に府は、登下校中の災害時などに子どもと保護者の連絡手段を確保できることを重視し、持ち込み禁止の方針を見直したのです。ただし、校内での使用は引き続き禁止で、持ち込みを許可するかどうかの判断は各学校に委ねられることにはなります。

 このように、災害時の連絡手段としては有用ということもあり、文科省は学校に持ち込む際のルールの必要性も含めて議論を進めるようです。

ビル・ゲイツは、14歳になるまで子どもにスマホを与えない

 ちなみに、海外の小中学校でのスマホの扱いはどのようになっているのでしょうか?

 まずフランスでは、小中学校でインターネットに接続できる端末の使用を禁止する法案が可決され、2018年9月から、3歳から15歳までの生徒たちはスマートフォンやタブレットを家に置いてくるか、学校内では電源をオフにすることを義務付けられました。

 もっとも、教育目的や課外活動、そして障害を持つ子どもの使用は例外で、15歳以上の生徒がいる高校などについては、使用を禁止するかどうかは学校の判断に委ねられるようですね。

 アメリカでは、国立教育統計センターの調査によると、学校への携帯電話持ち込みを禁止する割合が2009年の91%から、2016年には66%に下がっています。

 コネチカット州の高校やコロラド州の中学校などでは携帯電話の使用が禁止されていますが、ニューヨーク市では、2015年に携帯電話持ち込み禁止を撤廃し、携帯電話に関するポリシーは学校側が自由に設計できるようになったそうです。

 また、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、自分の子どもが携帯を持つのは14歳になってからと決めていたり、Appleの創業者スティーブ・ジョブズは生前、自分の子どもはiPadを使ったことがないと語ったと言われていることを考えると、とても興味深いなと思いますね。

 親が子どもに対して、何もしないでただ見守れば良いと言っているのではありません。家族でスマホを持つにあたってルールを話し合い、家族内で決めたルールを子どもに守らせるといった親子の関係性の構築を、スマホを与える側の親がしっかりと行う必要があります。

 私はまだ自分の子どもに持たせる段階ではないと感じているので、専用のスマホを持たせてはいません。もしルールに迷うようであれば、スマホの所有者が親だと伝えることから始めてみてはいかがでしょうか?

久原健司
1978年生まれ。ITの人材派遣会社やソフトウェア開発会社を経て、2007年に株式会社プロイノベーションを設立。現在は、一般社団法人日本情報技術振興協会(JAPRO)認定講師として企業研修を行ったり、日本一背の高いITジャーナリストとしてwebメディアでも活躍している。

https://nikkan-spa.jp/1560128

Contact

各種コンサルティングや
講演会についてのご相談、
ご協業に関するご相談など、
お気軽にお問合せ下さい。

ページトップ