『DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質【生産性】』
2023/02/03

『DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質【生産性】』

プロイノベーション代表の久原健司です。

今回は「DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質」についてお話しさせていただきます。

DXとは何か

私が企業の方にDXのイメージを聞いてみると、なんだか難しそうといったネガティブなイメージを持つ人が多いと感じることがあります。

DXとは何かといった、言葉の意味を理解しようとしたり、事例を集めて自社で活用できないかと調査した時に、聞きなれない言葉に翻弄されてしまったケースが多いのではないでしょうか。

まずは、DXとは何かという一般的な言葉の意味をお話しします。

DXという言葉が初めて出てきたのは、実は少し前の話で、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンらが発表した論文で、DXを「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されたのが始まりです。

日本におけるDXは、2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を取りまとめたことにより広がりました。
そこでのDXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より具体的に示されています。

いずれにしても、簡単にいうとDXとは「ITを使って生活をより良くしよう」ということです。

生産性を上げるDX

生産性を上げるDX

DXには大きく分けると2つあります。

1. 生産性を上げる
2. 売上を上げる

今回は、1の生産性を上げるDXについてお話しします。

生産性を上げるために、業務の効率を上げるには、現場で「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」を見つけて改善することが必要です。ムリ、ムダ、ムラとは具体的にどういうことか。例を挙げて説明します。

飲食店のホールスタッフは、お客さん20人に対して1人くらいがちょうどいいといわれています。客席100の飲食店で、常にお客様が入っている前提とした場合、ホールスタッフが2人で対応することはムリで、10人いるとムダになります。

ムラとは、ムリとムダが混在している状況です。

月のホールスタッフの人数を平均すると、1日あたりは5〜6人。一見ちょうど良いように見えますが、実際は日によってはホールスタッフが2人だったり、10人だったりして一定ではないので、この状況をムラと呼びます。

このムリ、ムダ、ムラを見つけて改善するにあたって、バックオフィスといわれる、経理や総務が行っている経費精算や勤怠管理を、エクセルを使って行うより、クラウドサービスを活用したほうが、ムリ、ムダ、ムラを見つけやすく、より効率的に改善することができます。

それはなぜでしょうか。

バックオフィスにクラウドサービスを導入(クラウド化)することには、さまざまなメリットがあります。

・入力作業を自動化
入力作業の時間がなくなる、入力ミスや計算ミスがなくなる

・業務の分業化が可能に
同時に複数人が作業することができるので、担当者の不在によって業務が滞ることがなくなる

・リアルタイムな情報共有が可能
インターネットにつながっていれば「いつでも」「どこでも」データを見ることができる

・電子申請・電子申告で手続き業務を簡略化できる
窓口に出向いたり、発送作業をする必要がなく、オフィスにいながら手続きができる

・在宅勤務やテレワークに対応して災害時でも業務を止めない
端末とインターネット環境があれば場所を問わないので、オフィス以外でも業務が可能

このようにクラウドサービスを活用したほうが、時間の「ムダ」を省くことができ、属人化した業務の「ムリ」を把握し、分業化することで「ムラ」を解消することがやりやすくなるのです。

決算書から改善点を見つける

書類のイメージ

さらに、会社全体の成績を向上させる上でもクラウド化にはメリットがあります。

小学校の時にもらった通知表を思い出してみてください。通知表には、その学期の学習に対しての評価が記載されています。

国語に関しては頑張ったんだねとか、算数はもう少し頑張ろうとか、そんなお話を先生や親としたのではないでしょうか。そして、成績が悪かった科目に関して、次の学期は成績を上げるように頑張ろうと目標を決めて取り組んだ人もいるでしょう。

この通知表にあたるものが、会社にとっては「決算書」といわれるものです。決算書のなかでも、「損益計算書」や「賃借対照表」を見れば、会社の資産や負債、売上や利益がわかります。この決算書をもとに、信用調査会社の帝国データバンクが企業に点数をつけてレポートを作成したり、銀行が企業にお金を貸す際の融資審査をしたりします。

要はこれらの資料から、会社の安全性や収益性、成長性、債務償還能力を客観的に見ることができるのです。

上場企業においてはホームページにIR(投資家向け広報)情報が掲載されており、株主や投資家に対して損益計算書、賃借対照表が公開されています。仮にすべての企業の損益計算書、賃借対照表が見られる状態であれば、自社が所属する業界全体の平均値や中央値を知ることが可能になります。各項目の自社の数値がそれらより上なのか、下なのかを比較することができるので、改善すべき項目がわかるのです。

また、業界全体ではなく、ロールモデルとしている会社や、自社と似た会社と比べることもできますので、より具体的に改善策を検討しやすくなるでしょう。

DX化の予算は売上の1%

1%

DXを行うには、まずデジタル化を行う必要があります。その上で、大きな障壁となるのがお金です。実は、これについても「適切な金額」が存在します。

業界によっても異なりますが、私は「売上の1%をデジタル化予算とすること」を基本的には推奨しています。

この「1%」という数字は、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書 2021」のデータを参考にしています。

継続的なIT投資は、業務効率化や売上増大につながり、結果として利益率向上に寄与すると考えられています。実際、中小企業より黒字割合が高い東証一部上場企業では、1%程度のIT投資を行っているというデータがあるため、日本ではIT投資額は年商の1%が目安とされているのです。

1%というと、売上が1億円の企業であれば100万円、10億円の企業であれば1,000万円となります。

もちろんお金がなくてもDXを行うことは可能ですが、予算が準備できない企業は、デジタル化を行う前に、アナログな手法で良いので、決算書を見直し、経営に対する改善を先に行うほうがいいでしょう。

また、このIT投資予算は、すべてを使いきることが目的ではありません。費用対効果の高い順に予算を使っていくなかで、最終的に売上の1%をIT投資できたら、結果として他の企業に比べて売上が高くなっている可能性が高い、という状態が理想だということにすぎません。

当たり前ですが、IT投資を無駄に行う必要はないのです。

何から始めればいいか

27インチディスプレイ

私もさまざまな企業様から相談されることがありますが、その時点では具体的な問題が明確になっていないケースが多いです。

単純に業務効率化を求めて、何か良い方法はないかと聞かれた場合、まず、ディスプレイの大きさを27インチ以上にすることを推奨しています。

これは購入して設置するだけで、業務効率化が行われるので、教育費用も社員のストレスもなく、ITリテラシーが低かろうが関係なく、一番費用対効果が高いと思っています。

なぜディスプレイを27インチ以上にすると業務効率化になるかというと、ディスプレイの大きさは作業をする際に使う机の広さと同じだからです。

たくさんの書類を並べて検討する際は、狭い机より広い机で作業したほうが効率が良いのと同様に、多数のアプリ(エクセル、ワード、パワーポイント、ブラウザ等)を並べて作業する際は、小さなディスプレイより、大きなディスプレイのほうが並べて表示できるので、生産性が高まります。

そうなると、27インチよりもっと大きなディスプレイのほうが良いのではないかとの意見もあると思いますが、費用対効果を考えると、商品点数が多く、企業の競争が激しいことから、安くてよいものが選べる27インチをおすすめします。

また、今年は業績が良いのでIT投資を一気に行いたいという企業の場合は、市場販売目的のソフトウェアの減価償却期間は原則3年以内、自社利用目的のソフトウェアは原則5年以内なので、3〜5%の予算範囲内で検討を開始するのが良いとお伝えしています。

構築するシステムに関しても、ITリテラシーを十分に考慮し、外部サービスを併用した前提で、必要な機能を、必要な時に、必要な分だけ搭載したシステム開発を行うことを推奨します。

システムを構築しようとテンションが上がっているときは、ついつい便利な機能を盛り込みすぎてしまう傾向がありますが、システムの3分の2の機能が全く使われていないという調査結果があるのが実情です。

私たちは極力ムダを回避して、その時に必要かつ最適なシステムを提供し続けることが、企業の成長にとって一番良いと思っています。

結論としては、商品やサービス、そして会社がデジタル化され、インターネットにつながっている状態であると、現場でムリ、ムダ、ムラを見つけやすく、改善も効率的に行えるということです。そのためには、効果的な投資を行い、適切なデジタル化を進めることが必要であり、その結果、より本質的な企業の成長につなげることも可能になります。

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